ハンドメイド石けん(準備編)
ここからは、先述した注意事項をふまえて、実際の石けんの手作りについての説明をしてみます。
どんな石けんにするか(油脂の選択)
出来た石けんの性状は、原料の油脂にどんなものを使うかによりほぼ決まります。色とかにおいに関してはその油脂固有の特性が影響しますが、石けんとしての特性、泡立ち、洗浄力、溶けやすさ、硬さ等々といった特性は、その油脂の脂肪酸の組成で決まってきます。
従って石けんの性状を推定するには、その油脂の脂肪酸組成や、複数の油脂の場合は混合時の脂肪酸組成を知る必要があります。初めは、イメージ先行でオリーブオイル単品、コーン油単品とかで作ってみて、その出来栄えを実感してみてもいいと思います。
さらに進んで、いろいろな油脂を使って楽しみたいときに、こんな油を使うと、どんなものが出来上がるかをある程度推定できればより興味がわくのではと思います。そこで、いろんな油脂を混合させたときに、どのような脂肪酸組成になるかとか、基準とする石けんの組成(一般市販の化粧石けん(牛脂ヤシ系)の代表的な組成)に比較してどのように違いがあるか等々を簡単に算出するようなものをexcelでサクッと作ってみました。
苛性ソーダとか水の量とかも算出されます。興味あるかたは、ちょっといじってみてください。(内容は極々シンプルなので、適当に、アレンジ等も出来ると思います。ただしグラフに関してはEXCELの特性で環境により表示、印刷の場合の位置が微妙にズレたりする場合もありますのであらかじめよろしくお願いします。)
ご注意:このシートを作成したEXCEL2002には、最終更新日を取得する関数がなかったため、以下の関数モジュールを追加してあります。環境によっては、ファイルを開く際、セキュリティ警告表示が出る事があります。(その場合はマクロを有効にしてください)
Function LastSaveTime() Application.Volatile LastSaveTime=ThisWorkbook.BuiltinDocumentProperties("Last save time").Value End Function |
材料・器具等
材料としては、油脂と苛性ソーダが挙げられます。油脂は、レアな種類でないものは食料品店、スーパー、ネット通販等どこでも容易に入手できますが、苛性ソーダは劇薬なので、必ず直接薬局に行って購入する必要があります。その際は印鑑・身分証明になるものが必要です。
材料 | 購入 | 保管 | 関係法令等 |
---|---|---|---|
油脂 | 制限なし | 10000L以上 届出 | 消防法 危険物第4類・動植物油類 1気圧において引火点が 250°C未満のもの ヤシ油(234度) アマニ油(222度) |
苛性ソーダ | 毒物・劇物取締法による指定薬局 身分証明・印鑑等必要 | 赤地に白字での「医薬用外劇物」表記 鍵のかかるところに保管 | 毒物・劇物取締法 |
※上記のヤシ油・アマニ油以外は引火点は250度以上あります。
物質名 | 揮発性質 | 引火点 | ヨウ素価 |
---|---|---|---|
エノ油 | 乾性油 | 222℃ | 192~208 |
アマニ油 | 乾性油 | 272℃ | 190~204 |
キリ油 | 乾性油 | 289℃ | 149~176 |
ヒマワリ油 | 乾性油 | 315℃ | 125~136 |
大豆油 | 半乾性油 | 310℃ | 120~142 |
綿実油 | 半乾性油 | 306℃ | 100~120 |
米ぬか油 | 半乾性油 | 280℃ | 99~108 |
ナタネ油 | 半乾性油 | 300℃ | 95~106 |
ヒマシ油 | 不乾性油 | 292℃ | 80~90 |
オリーブ油 | 不乾性油 | 324℃ | 75~90 |
パーム油 | 不乾性油 | 288℃ | 48~60 |
ヤシ油 | 不乾性油 | 234℃ | 7~10 |
苛性ソーダの水溶液を作る際の水は、精製水と呼ばれるイオン交換水が無難ですが、よほどの高硬度でない限りは、水道水でも大きな問題は無いと思います。
水道水の水道水質基準(厚生労働省)
対象 | レベル | 規制種類 |
---|---|---|
ニッケルの量 | 0.01mg/L以下 | 水質管理目標設定項目 |
カルシウム、マグネシウム等(硬度) | 10mg/L以上100mg/L以下 | 水質管理目標設定項目 |
鉄の量 | 0.3mg/L以下 | 水質基準項目 |
苛性ソーダ水溶液調整用の容器
水溶液にする際には、発熱しますので耐熱性の丈夫な容器が安全です。出来たアルカリ溶液を確実にハンドリングするために取っ手がついたもので、なるべく中の状態が良く見える透明なものがいいと思います。(耐熱樹脂や耐熱ガラス製のもの) 金属製のものでもステンレス製(SUS304(18-8ステンレス)程度かそれ以上がより望ましい)であれば問題無いでしょう。 |
MAX2~3kg、最少目盛 1gのもので十分ですが、苛性ソーダの1g以下がラフになります(その場合は少ない方で数字を丸めます)、出来れば0.1g目盛のものが最良(高価ですが) |
手動でやるならば、泡立て用の器具でゆっくりかき混ぜます。電動の物ならば、先端部は図の様なものの方が内容物が飛び散らなくて安全です。 |
この容器の中に、油脂と苛性ソーダを入れて反応させます。ハンドリング、温度調節等を考えると、取っ手付きのステンレス製の鍋等がいいと思います。 |
苛性ソーダの容器から取り出す場合は容量の大き目のスプーンが便利です。苛性ソーダを水に入れ溶かすときは発熱するので、必ず耐熱性(ステンレス製等)のものを使います。 |
安価なアルコール温度計でも十分使えますが、その場合破損しないように十分注意してください。最近はデジタル式の物も手軽な価格で出回っており、こちらの方が破損しにくくより安して使えます。 |
石けんの流し込みの型としては、定番の牛乳パックがいろんな意味で最適です。容量的にも作る石けんの量に合わせて、1000ml~200mlまでの商品が市販されています。その他石けんを成形する道具としては、キッチン用途のケーキ用やクッキー用の物がいろいろ使えますね。 |
苛性ソーダの使用液を作る際に発生する、細かい霧状の水酸化ナトリウム溶液(ヒューム) や予期せぬアルカリ液の液体の付着やハネから目や気管や皮膚を守るため、安全メガネ、マスク、手袋等が必要です。メガネは普段使用しているものがあれば使えますが、安いものなので顔面との隙間が少ない作りの専用保護メガネがよりベターだと思います。マスクはミストを吸い込まないためには、一般的な花粉症用の物でも十分効果はあると思います。手袋は、各操作が確実に行えるようになるべく薄手で丈夫なもの、耐油性をうたっていればなお良いと思います。 |
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