良い石けんとは(固形浴用・手洗い石けんとして)
そもそも良い石けんとはなんでしょう?!。ある人にとっては、添加物よりもなによりも適当に泡が立って、きれいに汚れが落ちて安ければそれでOKとなるでしょうし、またある人にとっては、添加物の表示等がすごく重要になり、一字一句を見逃すまいとする人がいるかもしれません。まあ、普通の人にとって日常生活では、あまりそれについて考えたりしないのが石けんだと思います。
そういう意味では、洗濯用の洗剤と似ているところが多いですが、やや違うのは直接皮膚に触れるものであり、なおかつにおいとか、使用した時の感じ、使用後の皮膚の感じなど化粧品的な面も多く持っています。そのあたりが、作る側にとっては付加価値を付けて、かなり高価なものとして売ることも出来る面もあるわけです。
石けんの役目
筆者としては、石けんは体の汚れを落とすもの以外の何物でもないと考えています。だから、天然成分とか、無添加とかと言う、キーワードにはなにか売らんかな的な、ある意味の胡散臭さを感じてしまいます。
かといって、添加物等の安全性はそれなりの関心があります。なるべく、安全なものを使いたいと言うのは誰しも思うと思います。ただ、香料も添加されていない石けんでは、使用していても気持ちが良くないしなにかもの足りません。俗に言う「石けんのにおい」は石けん自体のにおいではなく、石けんに添加されている香料のにおいです。筆者にとって良い石けんは、
・価格が適正な事
・添加剤の量、種類に合理性がある事
等々があげられます。
なにか特別な添加物を配合して、あたかも、**臭が減るとか、お肌がみずみずしくなるとかいう文言で、結構な価格をつけたものはもちろんですが、なにも入れていないと言うキーワードで、これまた結構な価格な物もありこれらについては、かなり疑問に感じます。
特に、**臭が消えるのは、元々石けんの洗浄力により、原因物質が洗い流される事によるもので、なにか特別な添加物がそのことに大きく関わっているとは思えないし、その後の制菌効果も、たとえ殺菌剤を配合していても、その効果はわずかであることが報告されています。
まあ、このようにどうも根拠が薄いエセ化学的な能書きで売られている例が多々あり、使用者側も十分そのあたりを理解して、賢い消費者になってもらいたいと思います。
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上記の多分にイメージ的な商品の特性の他に、商品として成立するには物理的な基本特性を持っていることが、前提となります。
洗浄剤としての石けん(固形浴用石けん)には、以下の基本性能を満たしていなければ、いくら香りや泡立ちが良くても、良い石けんとは言えません。
下記に石けんの品質管理上の基本項目をあげてみます
項目 | 内容 |
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サンドヒル | 石けんを流水中で手でこすりその後表面に現れた硬いブツをカウントし管理。ブツは、石けん生地自体のリファイン特性(石けん生地の結晶系(乾燥冷却条件等に依存)、ロール掛けの条件(クリアランス、回転数、温度等に依存)、リファイナーの条件(多孔板、温度等々))等々が関わり、石けんの使用感に大きく影響します。通常はゼロ~数個程度。 |
ハンター白度 | 石けんの白さを表す、指標。色差計等で測定。化粧石けんらしい、外観、白さ等をハンター白度と言う指標で測定(色差計にて測定)。色物の石けんは、主にLab値で管理する場合が多いです。(色差計使用) |
膨潤度 | 石けんピースを水に浸漬して、一定時間後の重量を量り膨潤(石けんが水を吸収しゲル状になった状態)性を測定。従来、自社で石けんを中性油をけん化後、冷却乾燥して石鹸生地を製造していた時代は、この膨潤性や解け崩れにこのような工程が影響していましたが(主に石けんの結晶系の組成等が影響する)、現状は海外のチップからの製造なので品質的には安定していると思われます。 ただし添加物によっては、膨潤性・解け崩れがかなり悪化する場合もあります。 |
解け崩れ | 水への浸漬、乾燥を繰り返したのち、解け崩れの様子を判定。膨潤性と同じく、製造段階の様々な条件の影響を受けます。湿度、温度等が過酷な浴室でもしっかりとした形状を保つことが要求されます。動くフイルム上に石けん片を乗せ、単位時間での減り具合を測定する「摩擦溶解度」と言う指標もあります。 |
亀裂 | 石けんピースを水に浸漬して、その後乾燥させて亀裂の状態を判定。一部、ロール掛け、その後のリファイナー、押し出し機の条件が良くないと、亀裂が多くなる場合があります。 |
泡立ち※ | 所定の濃度の石けん液を、一定の条件下で泡立て泡の量を測定。場合により、人工汚垢や硬度成分を添加する場合もあります。 |
嗜好品としての石けん
ただ、そうは言ってもいい匂いのする嗜好品の化粧品としての石けんは、これまた重要な石けんのポジションです。実用一点張りの普段使いの石けんはそれとして、たまには1個ウン百円~数千円の高級石けんを使ってみるのも楽しい事です。
特に外国製のものは、価格が高いものが多く、ものはともかく、ありがたい感じはしますね。
商品としての石けん
まあ、冷静に考えると、石けんの生地自体は、1パック3個入り100円のものと、1個数千円の高級石けんもほとんど同じで大差ありません。脂肪酸組成等は化粧石けんとして成立させるには、妥当な割合がありそれから著しく逸脱は出来ませんし、高価な油が必ずしも石けんに向いた良い組成でもありません。
では、同じ様な石けんがなぜそのような、価格の差が出るのか?、配合物で価格の差が大きいのは、ひとつには香料があげられます。
レモン系の3~5個パックで売られているようなものは、数千円/kgの香料ですし、高級石けんに使われているものは、それこそ天井知らず、まあ数万/kgはするかもしれません。
そこで、あくまで仮定ですが、香料の石けんの価格に対する影響を試算してみました。
石けんの価格に対する、添加物(香料)の影響(仮定による試算)
種別 | 試算条件 | 1個あたりのコスト(円) |
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石けんの重量 | 100g | |
香料の添加量(無水換算) | 0.5% | |
石けんの水分 | 13.0% | |
香料Aの価格 | 2000円/kg | 0.87 |
香料Bの価格 | 20000円/kg | 8.70 |
たとえ香料の単価が10倍違っても、石けんの価格に対する影響は案外小さいことがわかります。
まあ、製造経費(包装作業、包装材料等々)も高級なものはそれなりのコストはかかっていると思われますが・・・。その他の添加物についても、おおよその単価のレベルを挙げておきます。(細かい数字はあえて挙げません)
原材料名 | 価格レベル |
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キレート剤 | 数百円~千円程度/kg |
酸化チタン | 数百円/kg |
脂肪酸(過脂肪用) | 数百円/kg |
石けん生地(輸入チップ) | 数十円~百数十円/kg |
上記の原材料の費用に、包装材料の費用、生産関係の諸費用、物流・販売関係の諸費用、その他の管理費用等々がかかってきますので単純には考えられませんが、前出の配合例等からおのずと100gの石けんのコストがだいたいどれくらいなものかは想像できると思います。
要するに、石けんと言う商品は、日常使いのものはともかく、なにかの特別なアピール性がありソコソコの価格(たとえば千円以上/個)で売ることが出来たらかなりな利益が出せる、商品であることがわかります。(ただし、1個数十円~100円程度の日常使いのものは競争が激しく、輸入品もありなかなか利益が出にくい状況です)
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