石鹸雑記帳


石けんの水溶液

石けんの水溶液は、必ず、弱アルカリ性の液性を示します。そのアルカリ性に対して、過敏な皮膚のユーザーもいて、その対応として、ヒフと同じ弱酸性の液性となる皮膚にやさしい洗浄剤と言う感じで商品が存在しますが、欧米では普通の石けんみたいな普段使いでも、日本の物とは内容が異なりますが、使われている様です。

石けんの液性

石けんの液が目に入って痛いのは、石けん水が弱アルカリ性の液性のため眼の粘膜が刺激されるためです。洗剤はその、使用用途や配合により、様々な液性のものがあります。石けんは、そのうちの弱アルカリ性のカテゴリーに入ります。

家庭用品品質表示法による、液性表示の分類と代表例
液性pH代表例
酸性3.0未満トイレ用、オフロ用洗剤等
弱酸性3.0以上6.0未満シャンプー、リンス等
中性6.0~8.0以下リンス、ソフター、逆性石けん等
弱アルカリ性8.0~11.0以下石けん
アルカリ性11.0~衣料用洗剤、ブリーチ等

なぜ弱アルカリ性なのか

そもそも、石けんがなぜ弱アルカリ性なのか、ちょっと説明します。石けんも、界面活性剤の一種なのは先述したとおりですが、水に溶かすと、一部が加水分解してアルカリ性の元となる、水酸基を生じるようになります、それが弱アルカリ性になる要因になります。



石けんの水溶液は、中性石けんを基本として、加水分解したもの、平衡式の右側の脂肪酸と中性石けんで極く少量生成される酸性石けん、一般の水道水ならばそれらの中のカルシウム等と結合して出来る金属石けん等々、様々な形のものが存在しています。石けん水溶液も結構複雑です、筆者はかつて古いアメリカの文献でみて、結構石けんって奥が深いなあと思ったのを覚えています。


石けんと皮膚

元々、人間の皮膚の表面は、皮脂腺から分泌される中性脂肪類(または脂肪酸類)、スクワレン等々と汗腺から分泌される汗(アミノ酸、乳酸等々)の混合物によって覆われ保護されていますが、その液性が弱酸性になります。これは皮脂膜と呼ばれ、いわば、あらかじめ人体に備わった、天然保護クリームのようなものです。
一方、石けん液は、上記の記述でも分かるように、弱アルカリ性なので、それで洗浄するとそれらの皮脂膜が洗い流されて、一時的に皮膚表面がアルカリになりますが、人体の皮膚保護システムはその程度の事ではなんら破綻はきたさないで数時間もたてば何事もなかったように、皮脂膜が形成され弱酸性の皮膚が保たれます。(以下、そのサイクルの模式図を示します)



石けん以外の洗浄バー

まあ、確かに石けんで洗顔した場合は、一時的に、皮膚が突っ張ったような感じがして、しばらくするとじわじわと皮膚から油状のものが分泌されてくるのが分かりますよね。普通の人ならば、この様な人体の保護システムで少々のアルカリ等の外乱要因があっても、ちゃんと皮膚は本来の状態を取り戻すことが出来ますが、その機能が弱い方や、より低刺激な皮膚用の洗浄剤を要望されるユーザーに答えるかたちで商品化されてきたのが、下表の様な製品です。
現状では、アミノ酸系(例:N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム等をセタノール等のバインダーで固めたもの)やトリエタノールアミン系(これは、広い意味では石けんのカテゴリーかもしれません)が市場に出ています。
さらには、かつてはAS(アルキルサルフェート類)を主剤としたものも商品化されていました(ハイレン薬用石けん:花王製造、三共製薬販売)。この商品は、弱酸性が主な特徴で、主剤のAS自体は皮膚に対する刺激が大きく、、アルカリに特別過敏なユーザー限定かと思われ、現在は廃版商品となっています。

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※ ◆注意◆ ニュートロジーナ 透明石鹸は現在取り扱いが無いようです(amazon)2014/2月時点

・持田製薬は以前ニュートロジーナのライセンス生産をしていて、コラージュ石けんもTEA基剤で、よく似た配合となっています。
・個人的には、それらが石けんに比べて価格差ほどの圧倒的な安全性に優位性があるかは、少し疑問で、アルカリ性に対する過剰な過敏性の方はともかく、普通の皮膚の人ならば、普通の石けんで入浴も洗顔も問題ないし、経済的だと思っています。


石けんと水質

石けんは界面活性剤として様々に優れた点がありますが、硬水に弱いと言う、大きな欠点があります。それを洗濯用の粉石けんにした場合、洗浄力の低下のほかに、硬水で生成された金属石けん(主にカルシウム石けん)が石けん分を抱いて衣類に残り、衣類の変色変臭の原因になったりします。
一方、入浴用の石けんの場合も、硬水では泡立ちや洗浄性が阻害されあまり快適な使用感では無くなってしまいます。ただ、硬度の低い軟水域での使用の場合、微量に発生する金属石けんの微粒子が、洗い上がりのサッパリ感を演出するのに一役かいます。
欧米の場合、水がたいてい硬水なので、金属石けんが発生しにくく硬水に強いシンデッドバー(上記の ミノン 等もある意味シンデッドバーです)と呼ばれる、本来の石けんの脂肪酸塩ではない基剤で石けんとよく似た形状の固形洗浄剤がよく使われているようです。

 

このような石けんじゃあない石けんの例として「DOVE 」の情報を示します。DOVE はすでに1957年から販売されている、息の長い商品の様ですが、日本での固形製品の販売は芳しくありません。やはり、さっぱりしないとか、解け崩れがひどいとか・・・。水質、入浴方法等々日本の事情に合わない様に思います。

メーカー製品名成分価格アピール点
Unileverダヴ(DOVE) ココイルイセチオン酸Na、ステアリン酸、石鹸用素地、水、イセチオン酸、ステアリン酸Na、コカミドプロピルベタイン、硫酸Na、香料、塩化Na、酸化チタン、酸化亜鉛、EDTA-4Na、エチドロン酸95gX3 430円ユニリーバの人気石鹸【ダヴ】のホワイト3個パックです。ソープバーのシリーズの中では一番人気の石鹸です。モイスチャーミルクを製品中1/4配合した石鹸です。洗い流す時の感触が通常の石鹸と違いますが、それがモイスチャーミルクのうるおい効果。固形石鹸で洗顔・ボディ・ハンドウォッシュにご使用下さい。お肌に異常がある時は使用しないで下さい。