製造方法(けん化)
ここからは、自身の記憶の整理等も兼ねて、あらためて製造工程、生産ライン等についての情報をまとめてみようと思います。先述したように、石けん製造業にも時代の波がおしよせてきて、製造方法も大きく変化してきています。ここでは、昔ながらの方法からその後どのように変化してきたかも述べてゆくつもりです。
石けん(素地)を作る工程
ここで、石けん素地とは、けん化もしくは中和を行った直後の石けんの事を言い、石けん生地とは、素地を乾燥・混和・リファイン等を行い、押し出し・包装ラインにかけられる直前の物を指します。
この方法は、通常の中性油・・油脂(牛脂、ヤシ油等の脂肪酸の状態ではないもの)を、苛性ソーダで加水分解して、石けん素地を作る方法で1980年代くらいまでは、どのメーカーもこの方法で石けんを生産していました。
主原料である牛脂は、アメリカやオーストラリアからの輸入が多く、季節により色等が変動するため、一定の白さにするためには、活性白度等による脱色工程が必要でした。特に冬場の時期の油は、干し草のみのエサで色も濃く、脱色もしにくくなります。
けん化反応を進めるため、油脂を蒸気で100度程度に加熱する必要があり、製造現場の環境としては過酷なものです。けん化場とか釜場と呼んでいた現場は、換気扇等はあるものの夏場は、釜の周囲の気温は50度以上に達し、職人のみなさんは、冷房ブースに時々入りながら、汗で流出した塩分を補うための塩を取りながらの作業をしていました。
副生物であるグリセリンは、専門の業者さんが買い取って精製して、天然由来のグリセリンとして売られていました。現在は、ほとんどの石けん業者がこの方法での石けん製造はしていないのと、グリセリン自体の需要(タバコ用等の大量需要がかつてあった)と供給のバランスが崩れ、石けん廃液からの回収は採算が合わずされていないようです。
現在のグリセリンはプロピレンからの合成物(プロピレン->2-プロピルアルコール->グリセリン)が主流で純度も高く、価格も高くなっています。
最終的な終点は職人さんの「勘」、ヘラについた石けんの色つや、粘性、舌でなめた時のピリッとくる遊離アルカリの感じから決めます。(フェノールフタレインによるアルカリ定性も行います。)(定量的には遊離アルカリ0.2%以下程度)
脂肪酸を中和して、石けんを作る方法は、工業的に最も一般的な方法です。中和法としては、下記に示すような、中和槽を用いるバッチ法と連続中和装置を用いる連続法があり大規模的には連続中和法で製造されるのが普通です。
石けん(生地)を作る工程
石けん生地の製造工程はニートソープを乾燥させ、押し出し・型打ち工程にかけられる性状にする事です。これにも変遷があり、古くは、クーリングロールとバンド乾燥機が一般的でしたが、現状では、減圧乾燥による乾燥が一般的になっています。下記に一例を示します。
ペレットの状態
先述したように、多くのメーカーがかつては、この石けんペレットを作る事を、自前の工場で行ってきましたが、他の分野と同じく効率化、コスト等のため、大半のメーカーが海外での生産もしくは海外からのペレット輸入になってきています。輸入ペレット自体はなにも問題はありませんが、現地でのキャリーオーバー成分(受動的な添加物等)の存在が少し気になるところです。
一方、現在でも中性油から焚いて、セオリーどうり石けんを作っているメーカーも、小規模メーカーが中心ですがあります。
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