石鹸雑記帳


いろいろな石けん(液状せっけん)

前章までは主に、固形それも入浴用のいわゆる化粧せっけんと言われるものについて述べてきましたが、それ以外にもいろんな種類の石けんがあります。ここでは、それらの石けんについての概要を説明します。

液状石けん

液状の石けんは、アルカリ成分として苛性カリ(水酸化カリウム)を用いて製造します。一般に、同じ脂肪酸の場合、カリ石けんの方が水により溶けやすく、かつ皮膚にマイルドな事が知られています。
カリ石けんの場合、石けんのみでは洗浄性、起泡性等で難しい場合もあり、他の界面活性剤が補助的に使用される場合があります。

水石けん(食器用)

食器洗い用には、洗浄力の強い合成洗剤系の洗剤が多く用いられていますが、皮膚障害への対応、合成洗剤へのアレルギー(精神的、生理的)等々からこのようなカリ石けんの食器洗剤が作られました。
洗浄力はナトリウム石けんに比べ落ちますが、皮膚へのマイルドさ等他にない特徴があり、一部のユーザーから支持を受けています。

(配合例:C12とC18:f1のカリ石けん)

パーム核油カリ石けん20%程度
オレイン酸カリ石けん10%程度
安定剤・香料・色素等々1~2%

(製造方法例)
  1. パーム核油を苛性カリでけん化(高温(100℃近く)で加水分解)してよく混合する。
  2. オレイン酸と苛性カリを加え中和してオレイン石けんにしよく混合する。
  3. 安定剤・香料・色素等々を添加し良く混合する。
(製造ラインの例)


石けんシャンプー

シャンプーは、主に高級アルコール系や、アミド系の界面活性剤等々を主剤としています。石けんシャンプーは、そのような活性剤がどうしても合わない人様に開発されてきましたがカリ石鹸のみだとその起泡性がどうしても劣り、配合例の様な起泡助剤を併せて入れる場合もあります。
さらに、それ用のリンスも市販されています。(多くの場合、有機酸(酢酸等)が主成分)
いろんな、添加剤により髪の洗い上がりの感触の向上に気を使っている、通常のシャンプーと比べ、石けん系のシャンプーは、洗いあがりがどうしても、劣る印象(髪がキシキシする・・・)が出がちですが、継続して使ってゆくと髪の毛や頭皮の状態が良くなってきたという人もいます。(筆者もその一人ですが、手放して人に勧めるものではありません)

(配合例:C12とC18:f1のカリ石けん)

カリ石けん15%程度
ジエタノールアミド2~3%ヤシ脂肪酸由来、起泡剤
グリセリン2~3%保湿剤
安定剤・香料・色素等々1~2%
 
(製造方法例)
  1. 水を投入後、苛性カリ、脂肪酸類を投入し中和させカリ石鹸を作る(80~85℃程度)よく混合する。
  2. ジエタノールアミドを投入、混合する。
  3. 安定剤・香料・色素等々を添加し良く混合する。  
※製造ラインは水せっけんと同様です

ボデイソープ

近年、固形の化粧せっけんにかわり入浴時の体の洗浄剤として、ボデイソープが好まれるようになってきました。なにより使うときに固形の石けんみたいにタオルにゴシゴシしてからおもむろに体につけて洗う必要がなく、手軽にワンプッシュで使えるところが大きな魅力です。
組成的には石けんシャンプーと同様にカリ石けんを主剤に、その他の成分が配合され泡立ち、泡の質(キメの細かさ、安定性等々)等の性能を維持できるように考慮したものになっています。
商品性を上げるため、外観をパール状にしたりする場合が多々あります。石けんの濃度的にゲル化領域に近くなる場合もあり、開発する場合に注意が必要となる事もあります。


(配合例:C12とC14とC18:f1のカリ石けん)

カリ石けん25%程度
ジエタノールアミド2~3%ヤシ脂肪酸由来、起泡剤
プロピレングリコール2~3%保湿剤
グリセリン2~3%保湿剤
ジステアリン酸エチレングリコール2~3%パール化剤
安定剤・香料・色素等々1~2%

  (製造方法例)
  1. 水を投入後、苛性カリ、脂肪酸類を投入し中和させカリ石鹸を作る(80~85℃程度)よく混合する。
  2. サブタンクにジエタノールアミド、プロピレングリコール、グリセリン、ジステアリンエチレングリコールを投入、混合する。
  3. サブタンクの混合物を、カリ石けんのタンクに投入、混合する。
  4. 安定剤・香料・色素等々を添加し良く混合する。
(製造ラインの例)

配合原材料の種類が多くなると、サブの調合タンクであらかじめ別途調整して、混合する事があります