石鹸雑記帳


いろいろな石けん(紛体石けん)

前章までは主に、固形それも入浴用のいわゆる化粧せっけんと言われるものについて述べてきましたが、それ以外にもいろんな種類の石けんがあります。
ここでは、それらの石けんについての概要を説明します。


粉体石けん

粉体の石けん、いわゆる粉石けんは、昔から衣料用の洗濯石けんとして、広く愛用されてきましたが、合成洗剤の出現により、現状では一部の石けん愛好家の人々だけのものとなってしまいました。
いまだに洗浄力では、数ある洗剤のなかでも優秀な能力を持っていますが、その使いにくさ(低温溶解性、石けんカス、黄ばみ・・・)やコスト、コンパクト性等々により、合成洗剤に駆逐されてしまいました。
生分解性は良いのですが、元々の活性剤(石けん)の配合量が60~70%と多く、BOD等を考えると、手放しで環境にいいとも言えないのが残念です。
ただ、使用済み油(回収油)等を精製しそこから作られているものも多く、資源のリサイクルの点では、今後も一定の地位を占めていて欲しいと思います。


衣料用粉石けん

粉石けんの製法には、石けん素地を冷却ロールにかけてリボン状にしたものを乾燥させ、それを破砕して粉状にしたものが昔からありましたが、水に溶けにくく、微粉の部分もあり取扱いにくかったのが大きな欠点でした。
そこで、石けんを合成洗剤と同じようなスプレードライ装置にかけて、中空粒状の石けんが製造されるようになりました。これで、溶解性等がずいぶん改善されました。その後、洗剤のコンパクト化の流れで、粉せっけんも造粒され、コンパクト化されてきています。
(スプレードライ品:比重0.3程度 造粒品 比重:0.55~0.6程度)


(配合例)
米ぬか脂肪酸石けん65~70%程度界面活性剤
重ソーダ灰25%程度アルカリビルダー
ケイ酸ソーダ2号2~3%アルカリビルダー
ゼオライト3~4%流動性改善、金属イオン封鎖等々
CMC0.3~0.5%程度再汚染防止
香料0.2~0.5%程度

(製造方法:コンパクト粉石けんの例)
下記の図は、一般的な紛体の石けん・洗剤の乾燥工程です。この図はスラリーと熱風が、対向する構造ですが、平行させる形式もあります。このような洗剤のスプレー乾燥の工程は、省エネ、コスト、環境(におい等)などの考慮から、近年にはスプレーしないシステムに代わりつつあります。

1.水、苛性ソーダ、脂肪酸類を投入し、加熱混合し中和させ石鹸を作る(80~85℃程度)。
2.ケイ酸ソーダ2号、キレート剤を投入、撹拌混合する。
3.重ソーダ灰、CMCを投入、撹拌混合する。->スラリー完成
4.スプレードライ工程にて乾燥させる、-->洗剤素地完成(見かけ比重:0.25~0.28程度)




5.造粒器に乾燥した素地を投入、さらにゼオライトを投入し、造粒する。
6.造粒したものを、混合器に投入し香料、重ソーダ灰、ゼオライト等を投入し混合する。
7.安定剤・香料・色素等々を添加し良く混合する。-->洗剤生地完成(見かけ比重:0.55~0.6程度)
8.充填・包装ラインにて製品化する。




台所用粉石けん

水への溶けやすさ等から、米ぬか脂肪酸等が使用される場合が多いです。配合的には、せっけんのみのタイプと、ソーダ灰等のアルカリビルダーが入ったものがあります。

(配合例)
 
米ぬか脂肪酸石けん99%以上界面活性剤

(製造方法)

形状も、ロール冷却した石鹸リボンを乾燥、破砕して作る方法と、上記の一般的なスプレー乾燥工程で作る方法があります。