石鹸雑記帳


石けんの泡

バブル景気、濡れ手に泡、なんて、はかないものの代名詞に例えられる石けんの泡・・すごくなじみ深いものなんですが、その泡についての実態はよく知られていません。それについて少々説明して見ます。

 

界面活性剤としての石けん

世の中の、洗浄剤(衣料用洗剤、人体用洗剤、住居用洗剤、etc・・)はおおむね、その主な成分は界面活性剤と呼ばれるものでできています。石けんも脂肪酸塩と言う陰イオン界面活性剤の範疇に入るものから出来ている洗浄剤の一つです。
簡単に、界面活性剤の種類と用途等をまとめると下記のようになります。

 
種類用途例
陰イオン界面活性剤LAS、石けん、AOS各種洗剤
非イオン界面活性剤PEG、AE各種洗浄剤、化粧品等
陽イオン界面活性剤4級アンモニウム塩リンス、ソフター、逆性石けん等
両性界面活性剤ベタイン類シャンプー、化粧品等

ここで、陰とか陽とか非はどのような事を言うのか、ですが具体的には、その化学的構造により分類されます。そもそも界面活性剤とは一般に親水基と疎水基からなる構造物で水に溶かした状態で、それぞれに特有の電気特性(イオン特性)を持ちます。
すなわち、陰イオン界面活性剤は、その親水基が陰性・・マイナスの状態になるものを言います。
前章で説明したように、石けんの構造は、油がアルカリによって加水分解され、油を構成していた脂肪酸とアルカリ剤によって出来た塩ですがもう少し説明をしますと・・
下記の例ではC12のラウリン石けんですが、油となじみやすい赤の部分と水となじみやすい青の部分に分かれます。水となじみやすい部分はマイナスイオンの状態なので陰イオン界面活性剤と言う事になります。

ついでに洗浄の化学

ついでに、石けんなどの界面活性剤が汚れを落とすメカニズムについて少し触れておきます。
上記の説明で、界面活性剤は、その分子構造中に油となじみやすい部分と、水となじみやすい部分があることは分かったと思いますが、具体的に水に溶けた時にはどのようになるのでしょうか。
ごく薄い状態の場合、界面活性剤の分子は各々単体で存在していますが、ある一定の濃度になると、「ミセル」といって活性剤同士が結びついたかたまり状態のものを形成します。この濃度(一般にはCMC(臨界ミセル濃度)と呼ばれています、critical micelle concentration)は各種界面活性剤の個々の種類、アルキル基の長さ等々によって異なります。ミセルが形成される濃度になってはじめて、界面活性剤はその能力を発揮できるようになります。石けんは合成系の界面活性剤よりもこのCMCが高めなので、たとえば衣料用の粉石けんは合成洗剤と比較して単位当たりの界面活性剤の量が多く使用量も多いのはこの事も影響しています。
(ミセルは水中では、疎水基を内側にして外側に親水基が配列する球体の形になります。)

汚れは一般的に油状のものが多く、その表面は疎水性なので、活性剤の疎水基がその部分にとりつき汚れは活性剤分子に取り囲まれ、結果的にその汚れの外側になる親水基により水に可溶化(分散)され、汚れが落ちる事になります。


石けんの泡

コップに入った水にストローで空気を入れる事で考えると、水中から入った空気は水面で出た瞬間、空気の球形を保つように球形の水の膜ができますが瞬間に壊れてしまいます。
これは、水の表面張力がかなり強く、安定してその形が維持できないためです。

一方、石けんが溶解した水の場合は、石けん分子のミセルが親水基を水の膜側にして外側に疎水基が並び、その結果水の膜の表面張力が弱められなおかつ、石けん分子の結びつきにより膜の強度が上がり、その結果空気を内部に保ちながら球体の形を維持できるくらいの膜になり、それがいわゆる石けんの泡となります。

石けんに過脂肪剤等(脂肪酸、中性油等々)の油性のものが配合されている場合、さらにそれが石けんにより分散されより粘性の強い膜になり泡の安定性、キメ細やかさ等が向上します。


石けんの泡の虹

本来の気象現象の虹は、空気中の水の微粒子が太陽光を反射するときに、プリズムの様に光を分散反射して起こります。一方、石けんのシャボン玉の虹色は、シャボン玉表面の膜の反射光と内側の膜の反射光との光の干渉現象によって出来るものです。どの様な色になるかはその膜の厚さによりますが、膜の厚さは不均一なのであのようなランダムな虹模様になるわけです。